タッチの楽しさ!レトロな商店街が教えた、NFC普及の鍵は遊び心にあり

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六角橋

 2012年11月17日、NFCの普及を図るNFC labが、横浜市の六角橋商店街で実証実験「Touch Downtown」を開催した。これは、戦後の雰囲気漂わせるレトロな商店街で、やがて「普通」になるであろう技術「NFC」の可能性を一般来場者に試してもらうイベントだ。(NFC=Near Field Communications。近距離無線通信、非接触通信などと呼ばれ、Suicaやおサイフケータイで採用されているFelicaは、NFC規格の一部である。今騒がれているのは、スマートフォンにNFCが搭載されることによって、読み取り機として普及すること、アプリとの連携でオンライン・オフラインをまたいだマーケティング上の可能性が見込めるからである。)

 イベントの概要は、日経IT Proのこちらの記事「商店街でNFCを活用する実験イベント「Touch Downtown 六角橋」開催」を読んでもらうとして、finderでは、NFCに代表される先端技術の商店街や地域への導入・活用の観点から書こうと思う。

 auはこの秋・冬モデルで全てのAndroidスマートフォンにNFCを搭載したが、肝心のiPhone5がNFC搭載を見送ったことや、スマホに搭載されたNFCだからこそのサービスが現在はまだほとんどなく、本イベントでも来場者に別途NFCカードを配布し体験してもらった。そういった事情から、開催前は正直、わざわざ別のカードをもらってまでタッチするのか?という不安が私にはあった。

六角橋

 結論から言うと、この不安は全くの杞憂に終わった。最も人気を集めたのは、凸版印刷の「非接触戦隊ロッカク」。商店街に散らばる6人のロッカクレンジャーの腕に装着されたNFC対応スマートフォン全てにタッチが出来ると、景品がもらえる。ただこれだけのことなのだが、子どもたちに大人気。普段は親に連れられて商店街に来る子どもたちが、この時ばかりは、親の手を引く勢いで商店街を移動する光景があちこちで見られた。

 もう一つ注目を集めたのは、ブリリアントサービスの「ジュエルセイバーOFFLINE」。「星宝転生ジュエルセイバー」というオンラインゲームに登場するキャラクターに、同社が開発したイベント向けスタンプラリーシステム「NFC QUEST」が組み込まれたものである。普段はオンラインで楽しんでいたキャラクターによる対戦ゲームが現実の世界へと拡張された。これも子どもたちの人気を集めたが、驚いたのは、同社の社員がブースにいない時でも、子どもたちは感覚的にゲームの操作を理解出来たことだ。また、広島から駆けつけたという同ゲームのファンもいて、この面でも今後の可能性を見せた。

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写真:トークセッションの様子。パネリストは左から、石川清貴・六角橋商店街連合会会長、石原孝一販売促進部長、山下哲也・NFC LAB会長。モデレーターはfinder主宰の奥田浩美。

 子どもも老人も使える技術には間違いなく可能性がある。また、とりわけ初期の普及には、感覚的な部分やコンテンツ面での仕掛けが重要である。タッチという行為は、身体的・物理的で分かりやすい。タッチした時の音や光り方といった感覚的な側面が、予想以上に来場者を刺激していた。タッチによるお得感や利便性は今後の普及の上で重要だが、クーポンは例えばぐるなびでも、あるいは印刷物でも代替可能だ。しかし、感覚的な面やコンテンツ(たとえ「ロッカクレンジャー」のように飛び道具的であっても)の持つ遊び心にこそNFC利用促進の鍵があるように思えた。

 今回の成功の大きな理由の一つは、新技術の実証として現段階での現実的な線を引けていたことだ。まだNFCだけでは人を呼べないが、今回は六角橋商店街の食べ比べイベントに合わせて開催したことによって、相乗効果を生み出せた。また、いきなりNFCと課金の組み合わせは通信環境や導入店舗の担当者によって正しく使えない懸念もあるが、今回は決済以外のライトな楽しみ方を追求したことが功を奏した。

 さらに、商店街プロレス、官能小説朗読会、チャリティ野宿など常に個性的で新しいイベントを企画してきた六角橋商店街の存在は大きい。アイディア豊富な同商店街の石原孝一販売促進部長からは、「(NFCを絡めて)ご当地ゲームをやって欲しい。地元でバランスよく食べるとパワーがアップしたり、あるところに行くと急に弱くなったりするご当地キャラ。」という積極的な提案も飛び出したり、石川清貴会長からは「本当にやって良かった」と評価されるなど、受け入れ側の理解に助けられた。今後、別の商店街や地域での展開を考える上でも非常に参考になった。


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