オープンな姿勢の人々から生まれる鯖江のオープンデータ

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福野さん
試作中のアプリを市役所職員に説明する福野泰介さん(右)。机の上に広げたパンフレットの情報がオープンデータ化された。

 「こんにちは。この前出してもらったデータを元に、ウェブアプリ化してみたんですけど。」

 福井県・鯖江市役所の商工政策課では、10月5日に開催される、町の飲食店巡りが出来るイベント「サバエバル」の準備が行われていた。そこに、地元のIT企業jig.jpの代表を務める福野泰介さんがスマートフォンを片手に顔を出した。

 イベントの告知・案内に使うパンフレットは既に完成している。その参加店舗の情報をデータとして先日提供してもらっていたのだ。表示される店の一覧からサムネイルをタップすると、料理写真が拡大され浮かび上がってきた。

 「これに位置情報が加わると地図にマッピング出来るので、それもお願いします。」

 こうして出来たのが「サバエバルマップ」だ。(※モバイル端末からの閲覧推奨)

 鯖江市は、行政情報を利活用が容易なXML形式で公開する「データシティ鯖江」を標榜している。2012年1月、清掃委託に関して保有していたトイレの位置情報をXMLで公開。福野さんによってトイレ検索アプリが作成されたのが、オープンデータの始まりである。現在27種類のデータがオープンデータ化され、50以上のアプリケーションがそこから開発された。

オープンデータを可能にする町の条件とは?

牧田泰一CIO
鯖江市のオープンデータの取り組みを推進する牧田泰一・情報統括監(CIO)

 福野さんらが作ってきたオープンデータ活用のアプリは、シンプルそのものだ。市民がこれを機にスマホやタブレットの本格導入に踏み切ったり、地域に経済効果をもたらしたりているわけではない。しかし、データ活用の事例を見せ続けることで、市民がITに親しむきっかけづくりや、その先を着々と目指している。

 「amazonはAPIで伸びた。より未来のアプリを作るのに行政と組めることは大きい。目標は、市民の生活が変わるアプリケーションを作ること。オープンデータによって行政のあり方も変わる。道路も車も売っているのが今の行政。データがインフラとなり、サービスを民間開放することで、躊躇していたビジネスにも発展出来ると思う。」(福野さん)

 「(オープンデータが)新しいインフラということは理解出来るが、福野さんのような人たちが目に見える形にしてくれたことが大きい。市長が常々言っているのが、『情報を出すことで、市民と一緒に悩み、一緒に喜ぶ。』ということです。」(鯖江市の牧田泰一・情報統括監)

 オープンデータとは、時流に乗った情報公開の形式でもなければ、要求して出させるものでもない。市民と行政によるコミュニケーションの一つの手段である。鯖江のような地道でかつ開かれた町づくりの積み重ねがあって初めて、オープンデータも意味をなす。(了)