沖縄の女子中学生達が3日間で自動演奏ロボット制作 – デジラボおきなわ

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デジラボおきなわ自動ドラム演奏ロボットを制作した、西原東中学校ロボット部のメンバーとメンター陣

 2013年初頭、沖縄には東京などから投資家が大挙して訪れた(その時の取材記事)。だが幸か不幸か、目下の投資対象となる企業・起業家がいなかったこともあり、沖縄は平穏無事だった。むしろ、この1年半の間で土壌は耕されていた。今沖縄では、起業やIT、新しい働き方に関する地道な次世代教育が行われている。その中で3つのイベントが偶然重なった2014年8月17日、沖縄を取材した。

ものづくりとプロトタイピングから、子どもたちのクリエイティビティを支援 – デジラボおきなわ

 デジラボおきなわ(主催:STEMおきなわ)は、過去に沖縄で開催されたStartup Weekendの手法を引き継いだハッカソンイベントだ。プログラミングや物づくりを通して、子どもたちの創造力や課題解決能力の成長を支援することを目的としている。

 第三弾となるイベント「デジラボおきなわ・クリエーターズキャンプ」が8月15〜17日、恩納村のOIST(沖縄科学技術大学院大学)を会場に開催された。県内の中学生を中心とした約40名の子どもたちが、主にセンサーとプログラミングによるデータ取得、それに基づいて動作するプロダクトの開発に取り組んだ。

 最優秀賞に当たる「グッジョブ!賞」を受賞したのは、西原東中学校ロボット部による自動ドラム演奏ロボット。Scratchで書かれたプログラムによりRaspberry Piを制御し、ドラムを叩くアームを動作させるという仕組みだ。楽譜のタイミング(拍子)をプログラムという別の流れのものに移行することに苦労したそうで、当初は楽曲のスピードにドラムの動作が追いつかなかったが、プログラムを改善し自動演奏にこぎ着けた。プレゼンテーションでは、ドラムの動作に合わせ、ギターやボーカルなど他パートとのセッションを見事に成功させた。

 上の動画を見て頂ければ、制作・プレゼンテーションの全てにおいて中学生が実現したものとは思えないレベルに達していることが分かるだろう。なぜ中学生にこのような機会を作ることにしたのだろうか?イベントの狙いや今後の目標について、主催者である飯塚悟氏に聞いた。(聞き手:finder主宰・奥田浩美)

「インスパイアできるのは小中高のうちから。高校では遅いかも」

デジラボおきなわ・飯塚悟氏 インタビュー動画要旨

きっかけは?
 沖縄にはチャレンジャーをバックアップする風土はあるが、この流れを伝えるのに大学生では遅すぎる。彼らは既に安定した方向に舵を切ってしまっている。インスパイアできるのは、小中高のうちから。高校でも遅いかもしれない。

なぜ電子工作を?
 ムーブメントを作るには、動くもの、分かりやすいもので、なおかつ将来社会課題を解決できるという筋書きを子どもが説明できるくらいが良い。昔なら大企業のエンジニアでしかできなかったプロトタイプを、小中学生でも作れることを伝えたい。しかし、ハードウェアに固執しているわけではなく、2〜3年後には、アプリやウェブサービスを場合によってはローンチできるような中学生を出す道筋を作りたい。

参加者には日本語を母国語としない人も多いですね?
 沖縄の大きなアドバンテージは、ダイバーシティをすぐに実現できること。(若者たちが)本気で力つけて、目が外に向き、そして技と語学力と志を持ったら、沖縄は凄く強くなる。だが一番障害になるのは、既存の価値観、つまり子どもたちを左右する保護者。ここをブレイクスルーさせるには、作る場を提供するだけでなく、スピリットも同時進行で伝えていきたい。

手応えの程は?
 一番わかり易いのは、3回目でマスコミが飛びつくようになった。これまで、モノ作りやプロトタイピングの価値は社会の中で共有されていない、まだ早すぎるのかと思っていたが、少しずつ賛同者が集まってきた。

今後については?
 2つの柱がある。一つ目は、モノ作り、プログラミングといったテクニカルな部分。もう一つは、雇われることだけではない、自分たちで始めることが出来るという選択肢についての情報提供や育成を行いたい。

人材育成は長期戦へ、無駄ではなかったベンチャーブーム

 今回の取材で出会った人が異口同音に語ったことがある。それは、中高生あるいは小学生のうちからこうした環境に触れさせたいということ。大学生ともなると、良くも悪くも知恵が付き、相当な意思を持った人でなければ変えようがない。対して、より下の年齢層は変化・成長の幅が大きいということだ。

 沖縄特有の問題は大きいが、今、結果的に東京よりも多様性を簡単に実現できることは、沖縄の大きな強みである。デジラボおきなわクリエーターズキャンプには、インターナショナルスクールや基地内の生徒も参加していた。普通の県立中学校の生徒たちも英語でプレゼンし、イベントも日本人が主導して外国人を上手く巻き込んでいた。

 島の自立は、自立的な個人がどれだけ増えるかでしかない。そのためには、視点の広さ、創り出せる力、そしてそれを可能にさせる環境を子どもたちに提供することである。飯塚さんによると、こういった経験のない子どもたちの親から感激の声が特に大きかったという。プログラミング、ものづくり、国際コミュニケーション、プレゼンの場での発信、どれも3日間での成長が期待を超えていたそうだ。

 こうした小さなチャレンジの積み重ねが、確実に沖縄を強くしている。