シカゴの草の根コミュニティ・エコシステムのキーパーソン – クリストファー・ウィテカーさん

公開日: 著者:
ウィテカー氏

 finderは2015年3月29日に開催されるCivic Tech Forum 2015のメディアスポンサーとなりました。その事前取材として、主たる登壇者へインタビューを行いました。
 2人目はアメリカのシカゴを拠点に活動しているクリストファー・ウィテカーさん。イリノイ州政府機関勤務などを経てシビックテックに特化したコンサルティング会社「CivicWhitaker」を経営、Smart Chicago Collaborativeのコンサルタントとしてシカゴ地域のシビックハッキング・コミュニティの活性化に貢献し、ホワイトハウスからの表彰実績もある市民活動家です。コード・フォー・アメリカの米中西部地域のコーディネーターも務めています。Civic Tech Forum 2015では、シビックテックのための新しいエコシステムづくり「シビックテック大国の、ちいさな取り組み」と題した基調講演者として登壇する予定です。(執筆:市川裕康 @SocialCompany

州政府での勤務経験で感じた疑問からシビック・テクノロジストへ

 クリストファー・ウィテカー氏は、アメリカ中西部に位置するシカゴを拠点にしてユニークで多様なバックグラウンドを持つ草の根市民活動家・シビックコンサルタントとして活躍、日本の私たちに多くのヒントや学びを提供してくれそうな実践者だ。

 ウィテカー氏はリーマン・ショック直後の2009年春、イリノイ州政府の職員として、失業者が溢れ州政府に雇用保険の支払いを求める窓口の業務担当者としてキャリアをスタートさせた。彼を待っていたのは立ち上がるのに5分ほどかかる旧式のコンピュータ、そして雇用保険手続きを処理するためのシステムは彼が生まれる前の70年代に作られた時代遅れのDOS画面のシステムだった。

 そんな彼が通勤途中にiphoneでTwitterやFacebookでリアルタイムに情報収集したり、ブログ記事やネコの動画を見たりしながら「何かがおかしい・・・どう考えてもこうした最先端のテクノロジーは市民の課題解決にもっと活用されるべきだ」。そう思ったことがその後の彼の活動の原点にあるようだ。

 そんな彼が、当時シカゴで開催されていた「シビックテック」というキーワードを冠したイベントやハッカソンなどに参加するにつれ、次第にそのコミュニティの中心的なメンバーとなっていった。結果約4年弱の州政府での勤務経験に終止符をうち、2013年2月にスタートしたのがシビックテックに特化したコンサルティング会社、「CivicWhitaker」だった。

エンジニアでないからこそ出来たこと〜コミュニティつくり、ストーリーテリング

 ここで注目すべきことは、ウィテカー氏はプログラミングが出来るエンジニアという訳ではなく、大学でも政治学を学んだ一市民である点だ。だからこそ、積極的に地域のイベントに参加し、価値あると思ったこと、自分が学んだことをブログなどに執筆したり、ボランティアとして動画の撮影などにも協力したりして、地域の活動をより多くの人に知ってもらうことに献身的に取り組んだのだった。こうしたパブリックサービスの精神の背景には、2002年当時、湾岸戦争勃発直後に2年間イラクの地で陸軍に入隊し駐屯した経験も関係しているのかもしれない。

 ウィテカー氏により設立されたコンサルティング会社の最初のクライアントは、シカゴ市にある半官半民の市民団体、「スマート・シカゴ・コラボラティブ」と呼ばれる団体だ。彼はここでイベントのコーディネーターをしたり、大量のブログを執筆したりしている。今までに既に300本を超える記事がアーカイブとして閲覧が可能だ。

シカゴ市のチーフ・データ・オフィサーも参加する毎週火曜日開催のコミュニティイベント、シビック・ハックナイト


 また同時に、シカゴ中心部に位置するコワーキングスペースで毎週開催されている「オープン・ガブ・ハックナイト(The OpenGov Hack Night)」の共同運営者として、地域のシビック・コミュニティのキーパーソンとして行政機関、企業、市民団体からの参加者、エンジニア、デザイナー同士を繋ぎ、また「シビックテック」という言葉すら聞いたことがない人に対しては自らがYoutube動画で入門講座としての「CivicHacking 101」を作成、定期的に更新され、多くの人にとっての心理的ハードルを下げる取り組みも続けている。

 オープン・ガブ・ハックナイトの1周年を記念して作成された動画を見ると、実際の様子を感じ取れるのではないだろうか。とにかく毎週火曜日18:00から休むことなくこうした場所を提供することで、多様なバックグラウンドを持った人が気軽に参加し、コミュニティ、そしてイノベーションの生まれるきっかけを作り出している点が様々な素晴らしい活動の原点と思われる。

 動画の中でも紹介されているが、今日ではシカゴ市のチーフ・データ・オフィサーもいち参加者として会場に姿を現し、市民との本当の意味での対話が生まれている点はとても象徴的だ。

ホワイトハウスからも表彰されたシビックテックのチャンピオン(擁護者)

christpher2

 こうした地道な活動により、ウィテカー氏は2013年7月にはホワイトハウスから「チャンピオン・オブ・チェンジ」というプログラムの「シビックハッキング&オープンガバメント」部門の受賞者として、地域をよりよくするための日々の活動が認められるに至った。またコード・フォー・アメリカの地域コミュニティのリーダーとして初期から活躍し、現在では米国中西部地域のコーディネーターとしても活躍の幅を広げている。草の根市民活動家のロールモデルとして輝かしい実績だが、本人はいたって謙虚で、常に積極的に学ぶ姿勢に溢れているウィテカー氏。これからの活躍がますます期待される。

* Champions of Change: Civic Hacking And Open Government (ホワイトハウスのホームページより)

 なお、ウィテカー氏が携わってきた具体的な活動事例などは「Civic Tech Forum 2015」での基調講演で紹介される予定だ。また前日の3月28日午後にはプレイベントが有志により開催予定であり、そちらにもウィテカー氏は登壇予定だ。今回初めての来日をとても楽しみにしているウィテカー氏だが、何より日本の各地域でどのような取組が行われているのか、交流・対話を通じて学べることを何より楽しみにしている。是非会場で見かけたら話しかけてみて欲しい。(了)

ctf-logo1 Civic Tech Forum2015
公共とITの新しい関係〜シビックテックの課題と可能性〜
日付:2015年3月29日 場所:科学技術館(東京都千代田区)
主催:CIVIC TECH FORUM 2015 運営委員会
スケジュールや申し込みは、公式サイトhttp://wired.jp/special/ctf2015/にて

★前日の28日(12:00-18:45)には「CIVIC TECH FORUM プレミートアップ」も開催。詳細はこちらから★