日本的シビックテックの由来と可能性とは? – 小泉秀樹・関治之対談

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小泉秀樹先生
小泉秀樹・東京大学工学部都市工学科教授。東京大学にて

 finderは2015年3月29日に開催されるCivic Tech Forum 2015のメディアスポンサーとなりました。その事前取材として、主たる登壇者へのインタビューを行いました。
 オープニングセッションを行う関治之・Code for Japan代表が、基調講演者の小泉秀樹・東京大学工学部都市工学科教授を訪問する形で実現した対談。関さんの感じる運営上の課題に対し、小泉先生がコミュニティデザインの中からシビックテックが次に進むべき方向のヒントを提案してくれました。(取材日:2015年3月)

エンジニアが主体となり知恵の共有を図る – 関

 「東日本大震災の時にエンジニアは存在意義が揺らぎました。自分たちの技術って何の役に立つんだと。そこで、僕たちは地図を作ってサポートをしたり、情報をまとめるサイトを作ったり、被災地で現地の人達を助けるアプリケーションを作ったりという活動をしてきました。

 でも活動しているうちに、被災地で起きている問題は日本の地方全体にも言える問題であること、特にIT活用が非常に遅れていることが分かってきました。自分に何ができるかなと、技術のよりよい活用と、行政との新しいコミュニケーションについて思いを巡らせていました。そんな時にCode for Americaを知りました。市民による市民のためのテクノロジー活動。彼らはそれをシビックテックと表現していました。これだと思って始めたのが、Code for Japanです。

 Code for Japanでは「ともに考え、ともにつくる」をモットーに、行政に対して不平不満を言うのではなく、一緒に手を動かしましょうというところを大事にしています。今はアプリ開発やアイディアソン・ハッカソンを開催したプロトタイピングが中心的な活動で、そこから行政や企業との結びつきを図ろうとしています。行政側もオープンガバメントの流れの中で我々に期待を持ってくれていますが、まだキラーとなる事例はこれからの状況です。

 シビックテックのポイントは、オープンソース活用にあると思っています。この利点は、誰でも使えるよう横展開をさせることで、バグの解消や機能追加を本体に戻せる仕組みにあります。それによって知恵の共有が可能になるからです。

シビックテック的な動きは阪神淡路大震災に遡る – 小泉

 1995年は、阪神淡路大震災が起き、Windowsの普及によってインターネットが初めて一般市民に広まっていった年。ITを使って支援する側とされる側のマッチングが行われた最初の事例があり、厳密に言えば1970年代からあった「コミュニティデザイン」という言葉もこの頃から使われ出しました。

 危機的な状況があった時、人的なネットワークの重要性を皆んなが認識したからでしょう。今の文脈も同じ背景。そういう意味だと、ルーツは阪神淡路大震災の頃だろうと考えています。

 実は地図情報のようなことは、我々の研究室では日本でもいち早く取り組んでいて、行政・NPO・企業と一緒にシステム開発をしました。オープンソースにもしたけど、あっという間にGoogle Mapsができて、社会的な訴求ができなかった。

 なぜ普及しなかったのかというと、Google Mapsの登場も大きいけれど、主体的にカスタマイズできる人が各地域にいなかったので、テクノロジーが地域課題と結びつかなかったから。今のシビックテックの活動は、そこで比較的若い技術者の人たちが関わっていることが、今までになかった新しいムーブメントなんだろうね。

コミュニティの変遷とシビックテックの入り込む余地

 今関わっている人たちは、作ることが楽しいと思ってる人です。楽しみながら自分たちの町を良くする。ちょっと手を貸すと何かが形で残る。例えば検索機能を追加したとかでもいいんです。しっかりとNPO活動にコミットできない人でも、関わりやすい形を作るのが大事なんじゃないかなと思います。

 従来からあった地縁型組織と特定の目的で集まった人たち(特に若者)が作ったNPOとは、接点が難しかった。課題解決、良かれと思って、若い人はものすごいスピードでやろうとする。それを地域の自治会のような人たちがどう受け止めるかは、接合部分をよく考えないと。そういう対立が昔はしょっちゅうあった。今は自治会の方も弱体化してきて、流れも変わってきました。

 そこの背景は変わってきた気がします。地方自治体側としては、政府や世界の流れとしてオープンガバメントをやっていかないとという機運はある。受け皿側の受け入れやすさは変わってきた気がします。

 逆に言うと、どこが難しいと感じているの?

 首長が我々のイベントに参加してくれたり、自治体とは比較的話ができています。情報推進課や市民協働課といった課の人たちからは、割と歓迎されています。でも市民からは遠い存在だし、NPOの中でもIT活用に縁遠い人たちとはまだまだ接点がない。

 独り善がりの部分もなくはないかなと。資金調達を含めた持続性の問題や地元の巻き込み方の問題を感じています。ITリテラシーの高い人がたまたま自治体の中にいたからという側面もあり、コミュニケーションの仕方、誰とどういったプロセスを経てというのが分からない。まさに手探り。

 Code for Americaで活躍している人はどういった人?

 コミュニティマネージャーとエンジニアのセットという形が多いです。Code for America 自身には女性も多い。日本には、コミュニティーマネージャーはいないとは言わないけど、少ない。

 そういうところと組めばいいんですよ。そういう団体。世田谷であれば世田谷トラストまちづくりにはコミュニティマネージャーはいて、そういった組織の人と関わる。NPOの中にはコミュニティマネージメントを目的としているような組織もある。アメリカほどではないけれど、各地にあって、いわゆる中間支援組織的なところと組んでやることが大事だと思いますよ。(了)

ctf-logo1 Civic Tech Forum2015
公共とITの新しい関係〜シビックテックの課題と可能性〜
日付:2015年3月29日 場所:科学技術館(東京都千代田区)
主催:CIVIC TECH FORUM 2015 運営委員会
スケジュールや申し込みは、公式サイトhttp://wired.jp/special/ctf2015/にて

小泉さん・関さん
小泉秀樹先生(左)と関治之・Code for Japan代表