【CTF2015】シビックテックスタートアップの育成環境

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【特集】CIVIC TECH FORUM 2015

 CIVIC TECH FORUM 2015(2015年3月29日開催)特集として、本イベントの運営委員や各セッションの企画担当者”コンテンツチェア”に振り返り記事を書いてもらった。文章に加え、動画・写真・グラフィックレコーディングを合わせ、セッションの概要から詳細まで把握できる構成になっている。

・オープニングセッション「シビックテックは何をもたらすのか?」
・登壇:モデレーター:関治之(Code for Japan)、佐々木健介(ETIC.)/恩賀万理恵(グーグル公共政策部)/麻生要一(リクルート­ホールディングス)/柴崎辰彦(富士通 あしたのコミュニティーラボ)
・文章:関治之(CIVIC TECH FORUM 2015・運営委員)

登壇者の設定理由

 欧米ではシビックテックは成長市場として認知されており、米国におけるシビックテック市場の市場規模は2015年で65億ドル、2013年から2018年にかけて、既存のIT投資に比べ14倍早く成長するという調査結果も出ている。そのような市場環境の元、外部から投資を受け早いスピードで成長する会社「シビックテックスタートアップ」が出始めている。一方、日本ではシビックテックは市場としてはまだ認知さえもされていない。

 

 このセッションで扱う「シビックテックスタートアップ」とはシビックテック領域の中の企業で、一般的なスタートアップの定義のように、「今までにないビジネスモデルを開発し、短時間のうちに急成長する組織」としている。ただし、シビックテックはNPOなどの非営利事業も対象にしている為、必ずしも上場や売却などのexitを目指す組織ばかりではない。「exitがない」事業も含むという点が通常のスタートアップとは大きく違う点であり、このテーマを語る上で外せないポイントである。一般のスタートアップへの投資や育成を担っているシードアクセラレーターやベンチャーキャピタルといったプレイヤー以外の係わりも検討する必要があるのである。

 シビックテックをテーマにした組織すべてがスタートアップ的な規模の拡大を目指す必要は無いが、少なくとも急成長を志向する企業が現れ始めている状況の中で、そのようなスタートアップを支援し育成するような環境のあり方についてディスカッションを行うこととなった。

 登壇者にどのような方を呼ぶべきか迷ったが、世界的にもシビックテックの分野をリードしており、Google Impact Challenge という、最大5,000万円の助成金をNPOに支援する施策を日本で開始したばかりのグーグルの恩賀氏、日本を代表する大手企業の中で、共創をテーマにしたメディア「あしたのコミュニティラボ」を運営し大企業のオープンイノベーションをリードする柴崎氏、2015年を「シビックテック元年」と位置づけ、シビックテックフォーラムのセッションでもこの領域への会社としてのコミットを宣言したリクルートの麻生氏、そして起業家育成を20年にわたり行なってきたNPO法人ETIC.から佐々木氏に登壇いただくことにした。

セッション概要

 セッションでは、シビックテックを使って社会を変えうる事業を行っていきたい企業や事業の種(シード)はすでにあるとし、それを成長させていくにはどのようなサポートが必要なのか?という点からスタートした。

 

 佐々木氏によると、NPOや社会起業家の活動で、社会課題に対する洞察や気付きは既に色々な現場で生まれているが、テクノロジーとの融合がまだまだ足りておらず、サポートが必要な点であるという。テック側が課題に入っていくことも必要だが、既存のNPOや社会起業家がIT活用の視点を持つことも重要であるとのこと。支援をする可能性のあるプレイヤーとして、大企業があげられる。スタートアップとのコラボレーションを進めていく上で、柴崎氏は大企業側の従業員の意識を外向きに変えていく必要があり、囲い込み型ではなく共創型のビジネスモデルを模索していく必要があると論じた。

 セッション後半にパネラーが共通して語ったのは、「身近な課題解決」と「インパクト思考」とのバランスである。シビックテックコミュニティやNPOは、ともすれば目先の身近な課題解決にフォーカスしすぎて、スケールするビジネスモデルが考えられていない場合がある。一方で、スケールやインパクトばかりのいわゆる”Big Thing”ばかり考えていても、現場感が失われた魂の通わないものになってしまう。起業家側にとってどちらが大事かと言えば、「この課題を解決したい」という情熱と、「実際に解決できている」という部分が、スケーラビリティよりも大事だという意見が一致した。儲かるかどうかではなく、本当に役に立っているかが重要であり、それをスケールする仕組みはパートナー企業側でも考えられるものだからだ。

感じたこと

 50分のセッションでは語り尽くせないテーマであるし、上げた論点を回収しきることは出来なかったが、大企業側とのWin-Winの関係を作る上での起業家側で考えるべきことに対して一定の方向性が見えたのは良かったと思う。本稿で拾いきれなかった話も大変示唆に富むものだったので、是非動画の方も閲覧していただきたい。(https://www.youtube.com/watch?v=QO1TgLgv2nU

 セッション内でも口にしたが、起業家側はあまり小利口になる必要はなく、真摯に課題について向き合い、愚直に活動をやり続けること、そして、その動きの延長線をはるか高みに持っていくインパクト思考との両立を意識することが大事なのだと感じた。そして、そんな活動を応援する企業や社会的な仕組みは今後増えるだろう。いささか楽観的ではあるが、そのような希望的観測を持って本セッションのまとめとしたい。


動画

https://www.youtube.com/watch?v=QO1TgLgv2nU(Civic Tech Forum 公式YouTubeアカウント)

グラフィックレコーディング

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ここに取り上げた以外のグラフィックレコーディングはFlickrでもご覧になれます。https://flic.kr/s/aHsk9XGMST


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